どんなに立地条件や計画がよくても資金が調達できなければ開業が実現しません。また開業してからの運営費(運転資金)を加味してしっかりとした無理の無い資金計画を立てましょう。
資金調達計画のポイント
融資制度の種類は様々です。制度の内容を把握するとともに、開業計画にあった融資先を検討します。開業に必要な投資資金の内訳を明確にして、融資先へ多くの資金が借りられるように対策を立てます。
融資/資金調達先の種類
融資先 | 特 徴 | メリット | デメリット | |
公 的 融 資 制 度 |
独立行政法人福祉・ 医療機構 |
・診療所枠の、開業支援融資体制が整っている。融資対象は、建築資金(土地取得資金を含む)・機械購入資金・長期運転資金で、使途別に設定されている。 「直接貸付」約2ヶ月と「間接貸付」審査機関+約2ヶ月⇒市中の金融機関への借入申込みを経由することがある。 【融資限度額】 建築⇒5億円 土地取得⇒3億円 |
1)貸付期間が長期で組める。 | 1)診療所を新設・増改築する場合は、開設地の既存施設数によって融資対象となる場合とならない場合とがある。 |
2)据え置き期間が、民間に比べて比較的有利な場合がある。(据置期間2年以内) | 2)自己資金が十分でないと、融資が受けられない場合がある。 | |||
3)貸付利率が低く、固定金利 である。(固定1.8%・10年後見直し1.6%) | ||||
4)抵当権設定登記について登録免除税が免除となる。 | ||||
5)団体信用生命保険制度が利用できるので、院長死亡など万一の場合にも借入金が返済可能となる。 | ||||
6)業界情報、行政情報、経営相談力に優れている。 | ||||
国民生活金融公庫 | ・中小企業対象の政府系金融機関である。 | 1)比較的民間より利率が低く、固定金利である。 (2.20%~2.65%) |
1)担保が必要な場合、評価が銀行に比べ厳しくなる。 | |
・開業にあたっては独立開業貸付、その他の経営にあたっては、普通貸付等がある。 | 2)抵当権設定時の登録免許税が免除される。 | 2)手続きの際、手間がややかかる。 | ||
【融資限度額】 設備資金:7千2百万円(うち運転資金4千8百万円以内) |
3)審査状況の違いが大きい場合がある。 | |||
都道府県の制度融資 | 1)調達にかかる費用が比較的小額で済む。 | 1)どんな制度があるか専門的な情報と知識が必要となる。 | ||
市区町村の制度融資 | ・区町村により制度の有無があるので事前に問合せることが必要となる。 | 1)利子補助、設備費補助、融資などを行っている。 | 1)診療所が融資の対象にあてはまらない場合がある。 | |
2)小額しか借りられない場合が多い。 | ||||
医師会提携融資 (医師・歯科医師 信用組合) |
・都道府県の医師会が金融機関と提携し、会員に対して行っている。 | 1)医師会の提携金融機関から比較的協力的に支援が得られる。 | 1)競合する他医師会員との関係調整が難しい場合がある。 | |
民 間 |
民間金融機関の 一般貸付 |
・担保物件が揃っていることが必要となる。 | 1)都市銀行は、支店網、情報収集力、経営相談力に優れている。 | 1)交渉を有利に進めるための知識や準備が必要となる。 |
・自宅のローンを借りるなど、日頃からの付き合いが必要となる。 | 2)地方銀行は、地方での支店網、情報力、人脈に優れている。 | 2)金利が公的融資制度に比較して割高である場合が多い。 | ||
3)据え置き期間が公的融資制度に比較して不利な場合がある。 | ||||
設備・機器のリース | ・リース会社、各機器のメーカー、メーカー系クレジット会社等のリース契約先があるが、売却金額とリース条件は、各社で異なる。 | 1)固定資産でないため、総資産利益率が向上する。 | 1)銀行と同様の審査が行われる。 | |
2)管理が容易になり、保険をかける必要もありません | 2)リース料が毎月かかるため、経費がその分増える。 | |||
ノンバンク (消費者金融) |
・ビジネスローンは、銀行より借入れをしやすい面と利用上注意すべき条件がある。 | 1)銀行に比べると審査のスピードが早い。 | 1)銀行よりも利率がかなり高めになる。 | |
2)担保不要のタイプがある。 | 2)専門家と十分に相談し、信用のあるノンバンクを選ぶ必要がある。 |
融資への心構えと準備、対策
開業準備作業で重要なテーマの1つとなるのが資金計画、資金調達です。どんなに立地条件や事業計画書がよくても資金を調達できなければ開業を断念せざるを得なくなります。そのため融資審査を少しでも有利に展開するため、経営者自らが融資元に対して事業計画書の説明を行い、開業への強い意志を理解してもらう必要があります。開業計画について詳細な説明が必要と思われる場合は、税理士やコンサルタントなどの専門家に同行してもらう方法もありますが、その場合でも、説明は出来うる限り経営者が行い、補足説明を専門家が補うかたちで進めることが大切です。